生き物を飼育するにあたり一番苦心するのは、どうやったら快適に長生きさせてあげられるのか、ということ。
ビオトープではちょっとした油断から、生き物たちが全滅してしまうというケースもあります。その原因をしっかりと理解していなければ、同じ事態を繰り返してしまいかねません。
そこで今回は、生き物たちがダメになってしまう原因や、その対処法についてまとめてみました。
水質の悪化
我々人間が空気汚染で体調不良を来すように、水中の生き物たちにとっては水質が命。ビオトープ全体の水質の悪化は、生き物たちの全滅をも引き起こします。
水質により生き物がダメになる原因として考えられるのは、以下の通り。
カルキ抜きをしていない
ビオトープを作ろう!という人で、カルキ抜きをせずに生き物を投入するというケースはまずいないでしょうが…。
カルキが抜けたと思っていても、じつは抜けていなかったということはあり得ます。
「足し水だけだから、カルキ抜きしなくても大丈夫、大丈夫!」
などと言っている人も見たことがありますし。(カルキによる消毒効果で、病気を予防できるという人もいますが、実際にどうかのかはわかりません。)
水道水に含まれるカルキは地域によっても濃度が異なりますし、天気や置き場所によってもカルキが抜けるスピードは全く違います。
目安としては、よく日が当たる屋外では6時間以上、室内だと2~3日は放置しておかなければなりません。
冬は夏に比べてカルキが抜けるまでに時間がかかりますし、目安よりも長めにカルキ抜きに時間をかけたほうが無難です。
より確実に、時間をかけずにカルキ抜きがしたい!という人は、カルキ除去剤を使いましょう。
ろ過バクテリアが機能していない
生き物は生きていく上で必ず排泄物を出しますが、それらからは生き物にとって有害な「アンモニア」が発生します。
その有毒なアンモニアを「亜硝酸」へ、さらに亜硝酸を「硝酸塩」という毒性の少ない物質へと変化させる役割を担うのが、ろ過バクテリアなのです。
アンモニアも亜硝酸も毒性の強い物質ですから、それらが水中に溜まってしまうと生き物たちが生きていくことはできません…。
特にビオトープ立ち上げからあまり時間がたっていない場合や、水換えをした場合にトラブルが起きやすくなります。
ろ過バクテリアをしっかりと機能させるポイントは以下の通り。
- パイロットフィッシュを投入し、水質が安定してから生き物を増やす(目安は数週間から1ヶ月以上)
- バクテリアの棲み家の確保(砂利や土)
- 豊富な酸素量の確保(水面の広い容器、水草、エアレーション等)
- 水換えの際に砂利を洗わない、何度かに分けて水換えを行う
ろ過バクテリアは増えるのにとても時間がかかります。
パイロットフィッシュと言えどもできるだけ生き残らせてあげたい…という人は、市販のバクテリア剤も活用するのがおすすめ。
投入したバクテリアがすべて定着するわけではないようですが、一時的にアンモニアや亜硝酸の濃度を下げる効果は期待できます。
餌のやりすぎ
可愛くてついつい餌をあげたくなりますが、やりすぎは禁物。たくさん食べるということは、そのぶん排泄物も多くなるということ。
そうすると水中のアンモニアや亜硝酸といった有害物質も増えてしまうのです。また、食べ残しが腐って水質を悪くする場合もあるので注意。
温度や水質の変化に対応できない
いきなり温度差のある水や水質の違う水の中に入れられると、生き物はショックを起こしてしまいます。
新しくビオトープに投入する時、別のビオトープや水槽に移す時、水換えの時など、少しずつ水温と水質に慣らさなくてはなりません。
温度合わせ
水温計で温度を計り、差がなければ温度合わせはしなくても大丈夫ですが…。
温度差がある場合、生体の入った袋や容器を水槽の中に入れて30分ほどおくと、水槽内の水温と大体同じくらいになります。
水換えの場合には、給湯器などでお湯を用意し、水槽の水と同じ温度になるまで下がるのを待ってからカルキ除去剤を入れて使うという方法も。
水合わせ
温度の次に、水質を合わせていきます。袋や容器の中の水を3分の1ほど捨て、替わりに水槽内の水を入れます。
そのまま20分ほど待ち、また更に3分の1の水を入れ替える…というのを2~3回繰り返しましょう。
酸欠…植物に入れすぎにも注意
水の中と言えども、生き物にとって欠かすことのできない酸素。これが不足すると、当然生き物は生きていくことができません。
水中で起こる酸欠の原因を知っておき、早めに対処することが生き物たちを救うことにつながります。
生体が多すぎる
水量に対して生体の数が多すぎると、酸欠を引き起こします。
「メダカ1匹に対して1リットルの水が必要」とよく言われますが、ビオトープではエアレーションなどを使わないことが多く、その目安を守っても酸欠に陥ることがあります。
できる限り豊富な水量で少ない生き物を飼う、というのを心掛けましょう。
植物が多すぎる
日中は光合成をおこない酸素を放出する植物たち。
しかし夜になると、人間や動物たちと同じように酸素を吸って二酸化炭素を吐き出します。これが昼間の酸素の放出量よりも多くなってしまうと、当然酸欠に陥りますよね。
また、浮草がびっしり水面を覆っていたりすると、水中にある水草には光が届かず、光合成ができません。
植物を入れすぎない、そして増えすぎたものは除去することが大切です。
水温が高すぎる
水温が上がると、水中に溶ける酸素の量は減ってしまいます。夏場に酸欠が起こりやすいのはこのため。
日除けなどを設置し、水温が上がりすぎないように気を付けましょう。
酸欠の対処法
まず酸欠を起こさないようにするためには、次のことに気を付けましょう。
- 十分な水量の確保
- (適量な)植物の投入
- 水温の上昇を防ぐ
そしてもしも酸欠に陥ってしまった場合は、エアレーションや水換えを行い、早急に酸素を補給してあげましょう。
病気の場合、治療はどうする?
生き物たちがダメになる大きな原因の一つが、病気によるものです。
特に野生個体を収集したり、管理の悪い金魚すくいの金魚などは病気を持っている確率が高くなります。
そんな時には、治療をして病気を治してあげなければなりません。
塩水浴
メダカや金魚の代表的な治療法が、塩水浴。
メダカや金魚の体内には元々多少なりとも塩分がありますから、塩水を使うことで浸透圧が体液に近くなり、体力の消費を抑えたり回復力の増加が期待できるのです。
濃度の目安は0.3~0.5%ほど。
それ以上になると殺菌作用は期待できますが、生体にとっても負担がかかってしまいます。
いきなり0.5%濃度の塩水に入れるのではなく、初めは少量の塩から徐々に増やしていきましょう。
水槽に戻す際も、水合わせをきちんと行ってください。
使う塩は「岩塩」または「ただの塩」。
「アジシオ」など調味料が添加されているものは使わないでください。
金魚すくいですくってきた金魚は弱っていることが多いですが、塩水浴をすることで生存率をぐんとアップさせることができます。
0.5%と言えば、1リットルの水に対して5g。バケツ一杯分5リットルだとすると25g。
25gの塩って思いのほか量があるので、初めての塩水浴の場合、ちょっと躊躇してしまいますよね。
薬浴・経口薬・塗布薬
どんな病気なのか判断がついている場合、薬による治療を行うことができます。
薬には水に溶かして使うタイプ、餌に混ぜて食べさせるタイプ、直接患部に塗るタイプなどがありますので、病気の症状によって使い分けましょう。
グリーンウォーター
グリーンウォーターを使うと病気になりにくくなるだけではなく、弱った際の療養にも使えるのです。
原因はわからないけれど、なんだか元気がない…という場合には、グリーンウォーターの中で療養させましょう。
ただし、濃すぎるものや茶色く変色したものは逆効果になる場合があるので、緑茶の濃さ程度を目安に。
グリーンウォーターの作り方は簡単、バケツなどに水道水を入れて置き、日当たりの良い場所に放置しておくだけ!
これだけで徐々に水は緑色に変化していくのですが…グリーンウォーターの完成までには3週間~1ヶ月ほどかかってしまいます。
日照時間の短い冬場は、グリーンウォーター化しないこともしばしば。そこでできるだけ早く確実にグリーンウォーターを作るためには、いくつかポイントがあります。
種水を使う
少量でもいいのでグリーンウォーターが手元にある場合は、それを種水として使いましょう。
また、水道水をそのまま使うよりも、ビオトープ内の水を使う方が早くグリーンウォーター化します。
市販の生クロレラを使う
市販されている「生クロレラ」を使うと、人工的にグリーンウォーターを作ることができます。
生体を入れる
メダカなどの生体を数匹入れると、排泄物がプランクトンの餌になるため、より早くグリーンウォーターが出来上がります。
ただし、浄化能力の高いタニシなどは入れないほうが良いです。
水草や赤玉土は入れない
水草や赤玉土を入れると水がキレイになってしまうので、入れないほうがいいです。
酸素を多く取り込む
水面の広い容器を使ったり、エアレーションをすることで酸素を多く取り込みます。
蓋を閉めたペットボトルや瓶などでは、グリーンウォーターはできません。
日当たりのよい場所で作る
日当たりが良ければ良いほど、グリーンウォーター化は早いです。ただし、生体を入れている場合は水温に注意。
我が家では、ビオトープ内の水を使ってグリーンウォーターを作ります。モロコ数匹を投入し、時折エアレーション。夏場ならば数日で色が変化してきます。
さいごに…こんなサインを見逃さないようにしよう
ビオトープで生き物を長生きさせるためには、日頃からよく生き物たちを観察しておかなければなりません。
数時間前までは元気だったのに、突然動かなくなってしまった…ということも無いわけではありませんが、「水面で口をパクパクさせる(鼻あげ)」「底の近くで動かない」「泳ぎ方がおかしい」「身体が斜めに傾いている」など、何かしらの前兆がある場合もあります。
対処が早いほど元気になるのも早いですから、毎日しっかりと様子を見ておきましょう。